オース!オース!オース! バタヤンの人生航路/Autobiography: Yoshio Tabata

 オース!オース!オース! バタヤンの人生航路/田端義夫著

 歌手、ギターリストのバタヤンこと田端義夫氏の自叙伝的エッセイ。自身の人生を航海に例え、簡潔に時に熱く巡る。1919年、大正生まれのバタヤン。少年時代、貧しさゆえに苦労が多く、13歳の時に名古屋へ丁稚奉公に出ている。それ以前、5人の姉も若くして芸者に出たが、姉しげのが家を出た日のエピソードが涙を誘う。

いちばん仲のよかった姉しげのが名古屋へ芸者に行くことになった。駅まで送っていく途中、義夫、赤とんぼを一緒に歌おうと言い出した。悲しさを紛らわすためだったのだろう。

 この歌は、父親が亡くなり上の姉たちが芸者に出て、家に、母親、姉しげの、義夫、弟の4人になった時、寂しさを紛らわすように、夕方になると縁側でみんなで歌った歌だった。

 その後若くして認められ瞬く間にスターになり、多くの映画にも出た。人気が落ち込んでも再びヒットを飛ばした。過去を振りかえることなく帆を進めた。しかし65歳の時に患ったヘルペスの治療で、下半身が麻痺し歩けなくなった時、歌や人生を客観的に見つめなおし、神の啓示のようにこう思ったという。

「そうだ、さりげなく歌おう、さりげなく」

出版社:日本放送出版協会
頁数:206ページ
ISBN:4-14-005167-1
発売日:1992/04