エル・スール
アデライダ・ガルシア=モラレス 著
野谷文昭、熊倉靖子 訳
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ビクトル・エリセ監督の映画『エル・スール』の原作小説。
簡潔で美しい文章、悲しい話ですが心が洗われるようでした。
娘から死んだ父に向けての独白が、今では電気もなく誰もいない家、静かな部屋の中、かすかに残る存在に向けて行われていて、非日常的で神聖な空気が漂っていて、読書中、自分の薄汚れた心の表面に積もった埃が少しだけ拭われたような感じがしました。
映画を先に観ていて、原作では映画では描かれなかった、続きがあるとのことだったので興味を持ったのと、父の超自然的な力=振り子についてどんな風に書かれているのかが(何か暗喩的なモチーフなのか?)気になったので手に取ったのですが、力はそのものとして書かれているのも納得でした。
この著者の邦訳は今のところこれだけのようなので、機会があれば他のものも読んでみたいです。